亜玖夢博士のマインド・サイエンス入門

 

ちょっと怪しげなタイトルですが、以前こちらで紹介したこともある橘玲氏の著作です。

本書は「亜玖夢博士の経済入門」の続編で、「亜玖夢博士」シリーズの第2弾。

最新の脳科学を小説自立てで分かりやすく解説したものです。

前作同様、登場人物は亜玖夢研究所所長の亜玖夢博士、そこで働く工藤あかね、ファンファン、リンレイなどです。

タイトルが醸しだす通り、かなりブラックな内容も多いですが、この本を読めば最新の脳科学が分かります。

認知心理学、進化心理学、超心理学など、脳科学のいろいろなトピックスでストーリーが進展します。その中でも一つ、私が驚きだった内容を取り上げてみたいと思います。それは、「ベンジャミン・リベットの自由意志」についての話です。

第四講:「洗脳」 (p.185)
...(中略)...
リベットはまず、運動を行なおうと思った時と、運動が始まるまでの時差を計測した。
それによれば、意志(腕を曲げよう)から0.15秒後に運動(手首が曲がる)は開始さ
れた。つづいてリベットは被験者の脳内の電位変化から、運動を制御する脳部位が
いつ活性化されるかを計測した。その結果は、運動をあらかじめ予定していた場合は
0.8~1秒前、運動を予定していない場合でも0.35秒前に脳内では準備が始まっている
ことが分かった。
...(中略)...
亜玖夢博士「そうじゃな。たとえばヤカンのお湯が沸騰するじゃろ。そのとき君は
どうする?」
あかね「火を止めようとします」
亜玖夢博士「蒸気が噴き上がる音に気づいた君は、慌てて椅子から立ち上がる。
ところがリベットの実験では、ヤカンの沸騰に気づく0.35秒前に、君の脳は立ち
上がる体勢に入っておるのじゃ」
あかね「そんなバカな」
...(中略)...
リベットの実験は、行動を意識する前に脳が活動を開始していることを証明した。
すなわち人間は、脳や脊髄の無意識の反応を、それに応じて身体が活動を始めてから、
意識によって解釈しているだけなのだ。
ヤカンが沸騰すると、知らないうちに立ち上がろうとする。立ち上がろうとした
自分に気づいて、お湯が沸騰したから火を止めなくてはいけないと解釈する―――。
人間の意識は、意識されない脳や体の領域に大半を制約されている。
亜玖夢博士「そう考えれば、閾値下のプログラムを書き換えることで、人格そのものを
操作することができる。これが究極の洗脳で、自分が洗脳されたことすら気づくことは
できん」

(私の勝手な解釈が入っているかもしれませんが)この話を整理すると

「人間は自分の意志でモノゴトを判断していると思っていても、実は脳がうまいこと解釈しているだけの後付に過ぎなかったりする」

ということになります。

では、ここで述べられている「無意識の反応」はどうやって習得されているのでしょうか?本書には詳しい説明がありませんでしたが、おそらく日々の行動や考え方の小さな積み重ねが「無意識な反応」を習得しているのだと思います。そしてその無意識の反応を、つじつまがあうように意識が後付で論理的に解釈する。

「行動を変えることで考え方が変わる」ということがよく自己啓発の本でも書かれていますが、脳科学的にも証明されているのかもしれませんね。

あらためて脳というのは不思議なものだなと思いました。